<社説>保護者会長逮捕 萎縮せず見守り活動を


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 千葉県の小3女児殺害事件で、被害者が通っていた小学校の保護者会長(46)が死体遺棄容疑で逮捕された。容疑者はほぼ毎日、通学路で見守り活動をしていたという。子どもの安全を守るべき立場の人物に容疑がかかっているのは、あまりにも衝撃だ。地元だけではなく、日本中の親が言葉を失い、嘆いたことだろう。

 頼られる役割の大人が幼く尊い命を奪うという、残忍で無慈悲な行為は断じて許されない。「誰を信じればいいのか」との懸念は強まる一方だ。加えて地域の信頼で成り立つ防犯対策の根幹まで揺るがした。
 だが、今回はあくまでも特異な事例だ。大多数は子どもたちを守りたいとして純粋な気持ちでボランティアを続けている。通学路での見守り活動が萎縮するようなことがあってはならない。
 通学中の児童が連れ去られて殺害される事件は、2001年から05年にかけて長崎や奈良、栃木などで4件相次いだ。文部科学省は、それまで学校への侵入防止に力を入れていたが、07年に危機管理マニュアルを改定して登下校時の安全対策強化に乗り出した。
 警察庁によると、全国には16年末現在で約3万6千の「防犯ボランティア団体」があり、地域で活動を続けている。02年以降、参加者は増え、現在は270万人にも上るという。活動の中心は退職後の高齢者が担っている。
 本紙の地方面でも度々、見守り活動を長年続けてきた高齢者に、児童や学校側が感謝状を贈るという記事が掲載される。地域の安全は地域の方々の善意で支えられているのは言うまでもない。
 容疑者の保護者会長は、日頃の見守り活動の中で被害女児の通学状況を把握していた可能性もあると報道されている。従来は外部の不審者を警戒するために見守り活動が有効だったが、いわば内部の容疑者には新たな対策も必要だ。
 犯罪学に詳しい立正大の小宮信夫教授は「注意する対象を『人』から『場所』に変え、危険を見極める方法を子どもに伝えるのが重要だ」と指摘する。子どもたちと一緒に地域を歩き、どこに危険が潜んでいるかを調べて「防犯マップ」を作るのも危機意識を高める効果がある。
 警察には動機や経緯など事件の徹底解明を求めたい。そこから教訓を導きだし、地域の「見守り力」を高めていかないといけない。