<社説>法相不信任案否決 金田氏は適格者なのか


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 答弁に一貫性がなければ、審議のしようもない。所管する大臣が重要法案を説明できないとあっては、その職に留まることは認められない。

 金田勝年法相の不信任決議案が与党などの賛成多数で否決された。自民、公明両党などは金田氏が法相の適格者だと考えているのだろうか。否決は大いに疑問である。
 金田氏は「共謀罪」法案の説明が二転三転し、委員会審議を混乱させている。法相にふさわしいとは到底言えない。
 民進、共産、自由、社民の野党4党が提出した不信任案は、金田氏について「一般人が共謀罪法案の対象となるかなど、基本的事項さえ答弁できず、閣僚としてあるまじき醜態をさらし続けている」と批判し「法相の任にあたわないことは明白だ」とした。多くの国民も同じ認識だろう。
 「共謀罪」法案を審議する衆院法務委員会では、政府参考人として法務省刑事局長の出席を与党側の賛成多数で認めた。官僚の出席は全会一致で認めるのが慣例とされる。衆院事務局によると、1999年に政府参考人制度が導入されて以降、出席を起立採決したのは初めてである。
 慣例を破ってまで刑事局長に説明させたことは、金田氏が法相としてしっかり答弁できないと政府与党が判断したことの証しにほかならない。
 そうでなければ、国民が不利益を被る「共謀罪」法案の全貌を国民に知らせないために、説明できない金田氏を意識的に法相に据えているということである。
 金田氏が法相不適格である理由はまだある。金田氏は「捜査の結果、不起訴になったり、裁判で無罪になることはある」旨の答弁をした。
 看過できない。無罪判決は捜査自体が適切でないということだ。その延長線上に冤罪(えんざい)がある。組織的犯罪集団の一員として逮捕された国民の被害回復は、容易ではない。金田氏は無罪判決の重みを全く認識せず、人権意識も著しく欠如している。どう考えても法相失格である。
 与党は法相不信任案否決を受けて「共謀罪」法案を19日の衆院法務委で強行採決し、来週に衆院を通過させる方針である。
 だが、所管大臣が説明に窮する法案である。法相が責任ある答弁をできない以上、「共謀罪」法案は廃案にすべきだ。