<社説>がん患者巡るやじ 国会議員の資格はない


この記事を書いた人 琉球新報社

 がん患者の尊厳を否定する発言をする国会議員に、バッジを着ける資格はない。

 受動喫煙の防止策を非公開で議論した自民党厚生労働部会で、自民党の大西英男衆院議員が、たばこの煙に苦しむがん患者に関し「(がん患者は)働かなくていい」という趣旨のやじを飛ばしたと指摘され、本人が謝罪した。
 自民党部会では、飲食店について原則禁煙とする厚生労働省案と、表示をすれば喫煙を認める自民党案が示され、議論が紛糾した。
 子宮頸(けい)がんの経験者で厚労省案を支持する三原じゅん子参院議員が「働きながら治療するがん患者は店を選べない。命がけで喫煙の仕事場で働く苦しさを考えてほしい」と訴えた際、大西氏がやじを発したという。
 やじを受けた三原氏は「本当に残念。がん患者の働く場を奪うようなことを言ってはいけない」と述べた。
 厚労省は、仕事を続けているがん患者を32万5千人と推計している。職場への気兼ねなどから退職してしまう人も少なくない現状を踏まえ、改正がん対策基本法で、事業主に患者の雇用継続に配慮するように求めた。がんになっても治療を受けながら働けるよう、厚労省は昨年、企業向けガイドライン(指針)を初めて策定した。
 企業側には、通院予定や体調に合わせ勤務時間を調整したり、半日休暇や時差出勤を認めたりと柔軟な対応が求められる。中でも、屋内禁煙など職場の労働環境を整えなければならない。
 世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組み条約は、屋内の職場と公共空間を全面禁煙にすべきであると明示している。飲食店でのたばこ対策は、そこで働く従業員らの労働環境として考えなければいけないのである。
 大西氏の発言は国内法にも国際条約の趣旨にも反している。大西氏はこれまでに何度も問題発言をしている。
 2015年6月に党の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなることが一番だ」などと報道機関に圧力をかける発言をし、党から厳重注意処分を受けた。昨年3月にも「みこさんのくせになんだ」と女性蔑視とも受け取られかねない発言で批判を浴び、謝罪した。
 そして今回の発言である。釈明で済まされるわけがない。