<社説>中国が邦人拘束 全員の早期解放求めたい


この記事を書いた人 琉球新報社

 中国の法律は外国人であっても守ることは当然だ。一方で、中国は「人権尊重」は世界基準であることを認識し、行き過ぎた適用は厳に慎むべきである。

 中国で邦人男性6人が拘束されて約2カ月が経過した。国防省報道官は「スパイ活動に従事し、中国の国家安全に危害を加えた疑いがある」としている。
 うち4人は千葉県の地質調査会社社員である。社長によると、中国の温泉開発会社の依頼を受け、3月下旬から4月初旬までの予定で測定機器を使用し地質調査を行っていた。
 同社は約10年前から中国で数十件の地質調査を実施し、4人も複数回、中国で仕事をしたという。社長は「これまでと同じように仕事をしていた」「現地スタッフもいるから、十分常識的な行動を取っていた」としている。「スパイ活動に従事」したとは考えにくい。
 6人が拘束された山東省と海南省には中国海軍の港などがある。だが、中国当局から詳細な説明がなく、何がスパイ活動に当たる行為だったのか判然としない。
 不当な拘束ではないのか。法を拡大解釈して適用したのではないか。疑問は尽きない。
 約2カ月に及ぶ拘束は人権上も問題である。早期に解決し、全員を解放するよう求めたい。
 習近平指導部は、体制を揺るがしかねないとして「西側の価値観」の浸透を警戒し、外国人への監視を強化している。2014年に反スパイ法、15年には国家安全法、ことしは外国非政府組織(NGO)国内活動管理法を施行した。それに伴い、外国人の拘束が相次いでいる。反スパイ法施行以降、拘束された日本人は10人を超える。
 日中友好に尽くしてきた日中青年交流協会の理事長までもが逮捕されている。シンポジウム開催の打ち合わせなどの目的で16年7月、北京を訪問中のことである。中国人の法政大教授は16年2月、北京での学術業務を終えた後、20日以上にわたって事実上拘束された。
 これでは、いつ拘束されるか分からない「危険な国」と評価されよう。世界から「息苦しい国」と見られてもいいのだろうか。
 国家の安全を守ることを理由に、人権を侵害することがあってはならない。現状のままだと、中国を訪れることに恐怖を覚える人が増えかねない。そんな不幸な状況は避けるべきである。