<社説>嘉手納配備増大 住民軽視にもほどがある


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 米空軍嘉手納基地に6月1日から、在韓米軍烏山(オサン)基地所属のU2偵察機4機と空軍兵約180人が一時的に配備される。さらに嘉手納基地所属のF15C戦闘機が5月26日、飛行中に重さ2・3キロの部品を脱落させた。

 嘉手納基地にはすでに今月10日から米国コロラド州軍のF16戦闘機12機も暫定配備されている。嘉手納基地はこれまでになく、騒音激化と危険性増大という基地被害を引き起こしている。県民の生命と財産を脅かす深刻な事態を見過ごすことはできない。
 1月には山口県の岩国基地からFA18ホーネット戦闘攻撃機が暫定配備され、騒音が激化した。沖縄市立美里小学校では上空を飛ぶ戦闘機の騒音で授業が6回も中断を余儀なくされた。
 沖縄市に2016年度に寄せられた米軍機の騒音に関する苦情は206件で、前年度の約2・4倍に増え、記録が残る07年度以降で過去最悪となっている。騒音が住民の平穏な暮らしを破壊していることを裏付けている。
 外来機の移駐だけではない。嘉手納基地では4月と5月に相次いでパラシュート降下訓練が実施された。しかも5月は夜間に行われた。
 こうした訓練を昼夜問わず、住宅密集地に囲まれた基地で遠慮なく実施できるのは、米軍が地域住民の生命を軽視しているからだとしか思えない。
 日米両政府は11年、周辺地域の負担軽減を名目に、嘉手納基地所属機の訓練移転に合意した。だが訓練移転の規模よりも、嘉手納基地に押し寄せる外来機の方が圧倒的に多いはずだ。騒音苦情数が過去最悪に達していることをみても、現実は負担軽減ではなく負担増大になっているのは明らかだ。
 1959年には嘉手納基地所属の戦闘機が石川市(当時)の宮森小学校に墜落し、児童ら18人の命を奪った。68年にはB52戦略爆撃機が嘉手納基地に墜落して爆発炎上し、住民4人が負傷し、民家159戸が被害を受けた。昨年9月には嘉手納基地を離陸したAV8Bハリアー戦闘攻撃機が海上に墜落している。
 このまま嘉手納基地の運用を米軍の自由に任せていては過重負担が増すばかりだ。目に見える形で負担軽減が進まなければ、県民の要求は嘉手納基地の撤去へと軸足を移すことになるだろう。