<社説>ラスベガス乱射事件 今度こそ銃規制強化を


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 米国で史上最悪の銃乱射事件が発生した。悲劇を繰り返さないために、今度こそ銃規制強化を実現すべきだ。

 事件は米西部ネバダ州ラスベガス中心部で発生した。男がホテル上層階から近くの屋外コンサート会場に向けて銃を乱射し、少なくとも58人が死亡、527人以上が負傷した。
 自殺した容疑者のホテルの部屋から銃23丁と爆弾、2カ所の自宅からは銃26丁と爆発物、大量の弾薬が見つかった。なぜこれほど大量の武器をホテルに持ち込めたのか。ホテルの警備の在り方が問われる。
 米国には3億丁の銃があり、銃による犯罪が頻発している。子どもを含め年間3万人が命を落としている。
 2012年12月にコネティカット州の小学校で男が乱射、20人もの子どもと6人の教職員が死亡した。昨年6月、フロリダ州のナイトクラブの乱射事件で、49人が犠牲になった。フロリダの事件で使われた銃は米陸軍特殊部隊の要請で開発された自動小銃の民間使用タイプだった。当時のオバマ大統領は「戦争用の兵器」が社会に出回っているとして、銃規制強化を訴えてきた。
 しかし、共和党は合衆国憲法修正第2条を盾に「武装の権利」が保障されていると主張。ロビー団体の全米ライフル協会(NRA)は規制に抵抗してきた。NRAは豊富な資金力で米政界に影響力を持つ。
 政治的には銃規制反対派が多数を占めるため、規制の取り組みが進まない。1994年にクリントン政権で半自動小銃の販売を禁止する時限立法が成立したが、共和党のブッシュ政権は、更新せず失効した。
 オバマ政権下で殺傷能力の高い半自動小銃の禁止や身元確認の徹底といった主要な規制法案は成立しなかった。このためオバマ大統領は大統領権限の範囲内の規制にとどまざるを得なかった。
 共和党トランプ政権はNRAから強力な支援を受けている。トランプ氏は4月、NRAの年次会合で演説し、修正第2条を守る考えを強調し、規制強化どころか緩和に意欲を表明していた。下院ではNRAが後押しする消音装置の規制緩和条項を含む法案が委員会で可決された。
 今回の事件を受けサンダース大統領報道官は「大統領は修正2条を強く支持する立場だ」と強調し、銃規制強化の議論は「時期尚早」と語った。繰り返される銃による犠牲は政治の不作為であることは明らかだ。
 銃規制に本気で取り組むには、銃の売買を認めることを前提にした規制では、不十分だ。最終的に市民が合法的に銃を購入できる仕組みを廃止し、個人が銃を所持することを非合法化する方向にいかなければ、大きな効果は生まない。既に売買された膨大な数の銃の対策も不可欠だ。