<社説>オスプレイ墜落提訴 米司法は隠蔽体質解明を


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 米海兵隊は隠蔽(いんぺい)体質に加え、記録改ざんの可能性があることが明らかになった。

 2000年にアリゾナ州で起きた米海兵隊垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの墜落事故を巡り、ウォルター・ジョーンズ米下院議員と遺族は、国防総省に対して事故に関連する全ての情報の開示を求め、ワシントンDC連邦地裁に訴訟を起こした。
 米国の司法は軍の隠蔽体質を解明し、改ざんしたとされる記録を公開させるべきだ。
 国防総省はアリゾナの墜落事故で墜落の主な原因を操縦士2人の「人為的要因」と発表した。しかし、ジョーンズ氏らが調査を続けた結果、16年にワーク国防副長官(当時)はジョーンズ氏宛て書簡に、人為的要因が事故の一因だったことに疑いはないとする一方、操縦士2人にだけ責任があるのではなく、開発段階だったオスプレイに欠陥があったことを認めた。
 事故後に海兵隊の上層部がオスプレイの安全性を示す数値について「操作」を示唆するEメールのやりとりの開示を求めたが、海兵隊からの回答は黒塗りの資料だった。まさに隠蔽体質の表れだ。事故原因に関わる記録を改ざんしているのなら犯罪行為である。
 ジョーンズ氏は、ブッシュ政権当時のチェイニー国防長官もオスプレイの開発プログラムを続けるべきでないと考えていたが「強い圧力があったようだ」と指摘している。
 隠蔽体質は在沖米軍にも共通する。昨年12月に発生した名護市安部での墜落事故報告書も、米軍は「人為的ミス」と結論付け、事故の経過を踏まえた意見や提言は全て黒塗りで公表したからだ。
 オスプレイは、昨年12月に名護市で墜落事故を起こして以来、今年8月にオーストラリア、9月にシリアで墜落事故を起こし、緊急着陸も相次いでいる。
 ヘリモードでは制御が不安定で、空中給油できないという構造上の欠陥に加え、固定翼モードでも乱気流などで給油機のホースが安定せず接触すればプロペラを壊す危険性がある。
 米国の専門家は、エンジンを含め当初の設計より頻繁な部品交換が必要で、深刻な機体整備の課題があると指摘している。
 15年のハワイ州オアフ島の墜落事故について、海兵隊が機体の改善を勧告した。欠陥機だと認めたようなものだ。
 米海軍安全センターがまとめた17会計年度(16年10月~17年9月30日)の事故統計によると、米海兵隊航空機部門の10万飛行時間当たりの最も重大な「クラスA」の事故率は5・28件に上っている。過去10年間の平均事故率の約2倍弱で、オスプレイはFA18戦闘攻撃機と並び最多の4件だった。
 これ以上、沖縄上空でのオスプレイの飛行は認められない。県民の生命を守るため、欠陥機は沖縄から直ちに撤退すべきだ。