<社説>米軍ヘリ飛行再開へ 県民の命軽視を認めない


この記事を書いた人 琉球新報社

 何度同じことを繰り返すのか。沖縄県民の命と安全を軽視する行為は、断じて認められない。

 在沖米海兵隊は、東村高江に不時着、炎上し、飛行を停止していた米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリコプターの通常飛行を18日に再開すると発表した。
 米海兵隊は事故を受けて、航空の専門家が整備記録を見直し、懸念につながる運用上の問題などは見つからなかったと概説した。
 それならなぜ重大事故が起きたのか。県民が知りたいのは事故原因や再発防止策である。細かい説明がないままの飛行再開は納得できない。強く抗議する。今回の衆院選で問われるべき重要な争点だ。
 小野寺五典防衛相は「安全性の十分な説明がない中で一方的な発表は遺憾」と述べた。「遺憾」で済む話ではない。米軍に抗議して飛行再開を阻止するくらいの姿勢が必要だ。
 ローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官は「われわれは日本における米海兵隊航空機の飛行の安全性を約束している。安全ではないと思える運用は決して許さない」と述べた。「許さない」というのは決意表明にすぎない。これまでに何回墜落しているのか。
 米海軍安全センターが10月に発表した17米会計年度(2016年10月~17年9月30日)の事故統計によると、米海兵隊航空機の10万飛行時間当たりの最も重大な「クラスA」の事故率が07年以降、過去最悪の5・28件で、過去10年間の平均の2倍弱となった。過去最悪の事故を起こしている海兵隊機が沖縄に駐留しているのである。
 今年8月、普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが豪州で墜落し、乗員のうち3人が死亡した。しかし、わずか2日後の7日に沖縄でオスプレイが飛行を再開した。
 当初は、米軍が日本政府の飛行自粛要請を無視し、飛行を強行したとみられていた。だが、政府は「運用上必要なものを除く」との条件を付けていた。これでは「どうぞご自由に」と飛行再開を米側に促したも同然だった。まさに「日米共犯」である。
 米軍は16年12月に名護市安部で墜落したオスプレイも、墜落事故から6日後に飛行を全面再開した。
 海兵隊が沖縄で重大事故を起こしても、すぐに飛行再開できるのは日米合意が関係しているのではないか。沖縄返還交渉で、日本政府は返還後も米軍が在沖基地を自由使用することを認めている。
 1971年、沖縄返還交渉に対する最終要請を行った屋良朝苗主席に対し、佐藤栄作首相は自由使用について触れ「米軍の勝手にはできまい」と述べている。しかし、現実は異なっている。
 返還交渉のつけと、沖縄に関する日本政府の対米追従姿勢が県民の命と安全を危険にさらしている。