<社説>暮らし 不安のない将来像を示せ


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 子どもたちに不安のない未来を残せるか。今回の衆議院議員選挙では、消費税増税の是非や経済・雇用が主要争点に挙がっている。有権者として将来世代につけを回さない選択をしたい。各候補者も明確な将来像を示してほしい。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2015年時点で子どもの貧困率は13・9%(7人に1人)だった。同時期に行った県の調査では県内の子どもの貧困率は29・9%(3人に1人)に上る。
 全国の2倍以上という厳しい状況の背景には、県内の低賃金がある。年間所得200万円未満の「働く貧困層(ワーキングプア)」と呼ばれる世帯が県内は25・9%を占め、全国ワーストだ。
 全国の子どもの貧困率は12年調査から2・4ポイント改善した。要因として「アベノミクス」により国内の雇用情勢が改善したことがある。有効求人倍率はバブル期以来となる高水準を維持している。
 だが労働者の賃金が増えた実感はない。直近3年間は上昇傾向にあるが、16年時点の平均賃金30万4千円は01年の水準に回復しただけで、賃金が上がったとはいえない。「アベノミクス」の恩恵は大企業など一部の層にすぎなかったといえる。
 県内でも有効求人倍率は17年8月まで11カ月連続で1倍を超える。だが正社員の有効求人倍率で見ると、全国平均が1・00倍なのに対し、県内は0・49倍にすぎない。「アベノミクス」から最も縁遠いのが沖縄だといえるだろう。
 県内4選挙区の主要候補は各氏とも最低賃金引き上げや所得の向上などを公約に掲げている。貧困からの脱却、県民生活の安定という観点からぜひ実現してもらいたい。
 各党で主張が分かれるのが消費税増税の是非だ。自民、公明の与党は予定通り19年10月に増税した上で税収を教育無償化に使うとしている。凍結とする希望や維新をはじめ、立憲民主、共産、社民など野党はいずれも増税に反対している。
 将来世代への投資を訴える与党と足元の景気を重視する野党とに分かれた形だが、両方の課題はどちらか一つを優先すべきものか疑問だ。
 教育無償化をはじめとする社会保障の充実は今回の総選挙に関係なく、実現が急がれる。景気回復もバブル以降の長年の日本経済の課題だ。各党の公約は問題の先送りになっていないか。
 教育だけでなく待機児童、年金など暮らしの課題は山積している。だがいずれも国の借金で賄っているのが現状だ。将来世代への負担先送りを避けるには、消費税増税だけが唯一の解決策だろうか。
 政権選択選挙ともいわれる今回の総選挙だが、未来を築く選択でもある。生活者の視点で財政の無駄はないか、新たな財源はないか、各党の経済政策を見極めたい。