<社説>沖縄に核貯蔵肯定 再持ち込みは断固拒否


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 安倍政権の外務事務次官を務める秋葉剛男氏が在米日本大使館の公使時代、沖縄への核貯蔵施設建設に肯定的な姿勢を米国に示していたメモの存在が明らかになった。

 核施設建設容認は沖縄に再び核兵器を持ち込ませることを意味する。「作らず、持たず、持ち込ませず」の非核三原則の国是に反する。沖縄を三原則の適用外とし、県民を危険にさらす発想ではないか。沖縄への再持ち込みは断固拒否する。
 メモを入手した米国の科学者らでつくる「憂慮する科学者同盟」のグレゴリー・カラキ上級アナリストは、名護市辺野古への新基地建設と隣接する米軍辺野古弾薬庫の再開発を挙げ、沖縄への核兵器の再持ち込みに警鐘を鳴らしている。
 メモによると秋葉氏は2009年、オバマ前米政権の核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」策定に向け、米連邦議会が設置した戦略態勢委員会(委員長・ペリー元国防長官)から意見聴取された。沖縄での核貯蔵施設建設について問われ「そのような提案は説得力があるように思う」と肯定的な姿勢を示した。
 米連邦議会の委員会での発言であり、個人的な意見とは受け取れない。秋葉氏は意図を説明する責任がある。
 辺野古弾薬庫や嘉手納弾薬庫には、かつて1300発の核兵器が貯蔵されていた。1959年6月には、米軍那覇飛行場配備のミサイルが核弾頭を搭載したまま誤射を起こし、海に落下する事故も起きていた。
 核兵器は日本復帰の際に撤去したとされる。だが沖縄返還交渉の過程で有事には米軍が沖縄に核を持ち込めるという密約が結ばれた。民主党政権は2010年に、核密約が失効したとの認識を示したが、米国の認識は正反対だ。
 米国防総省の歴史記録書は「米国は危機の際にそれら(核)を再持ち込みする権利を維持した」と明記している。再持ち込みは米国にとって「権利」なのだ。
 一方、秋葉氏発言は、自民党内にある「持ち込ませず」の見直し議論と重なる。例えば、石破茂元幹事長は17年9月のテレビ番組で、北朝鮮による核実験強行を踏まえ、日米同盟の抑止力向上のため、日本国内への核兵器配備の是非を議論すべきだとの考えを示した。
 秋葉氏が米連邦議会委員会に提出した書面には、米国に小型核保有などを促す要望もある。トランプ政権が今年1月に発表したNPRには、要望の趣旨に沿って小型核の開発が明記されている。「核なき世界」を目指したオバマ前政権の方針を大きく転換し、核保有国に核軍縮義務を課した核拡散防止条約(NPT)への背信行為である。
 非人道的な核兵器廃絶を促すべき立場にある日本が、「核抑止論」に固執するのは自己矛盾である。被爆国としてあまりにも無責任だ。