<社説>辺野古に活断層疑い 新基地の危険性また一つ


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 活断層の上に巨大な施設を造ることほど愚かなことはない。たとえそれが「疑い」の段階であってもだ。

 沖縄防衛局が名護市辺野古海域で2017年2~4月に実施した地質調査結果の報告書で、新基地建設予定海域に活断層が走っている可能性を指摘していることが分かった。埋め立て予定海域近くの陸地を走る辺野古断層と楚久断層とみられる2本の断層を「活断層の疑いがある線構造に分類されている」と明記している。
 活断層は過去に地震を起こした形跡があり、将来も地震を起こす可能性がある断層のことである。地震が起きて地盤がずれたり、津波が発生したりすれば、新基地の滑走路が破壊されるだけではすまない。弾薬や燃料など基地内の有害物質が海や近隣集落に流出し、火災や汚染などの二次被害が起きる可能性がある。攻撃目標になるだけでなく、新基地の危険性がまた一つ明らかになった。
 活断層の疑いがあることを政府自身が指摘している以上、辺野古新基地建設は直ちに中止すべきである。
 報告書はC1護岸付近の海底地質を「非常に緩い、柔らかい堆積物」とし「構造物の安定、地盤の沈下や液状化の検討を行うことが必須」とも指摘している。
 防衛局は自身が作成した報告書の指摘に従い、科学的、客観的に検討していく責任がある。「工事ありき」の結論に結び付けるような恣意(しい)的な検討は許されない。
 地盤の強度は、数値が高いほど堅いことを示すN値が「ゼロ」を示す場所が多く存在し、地盤がもろいことも報告書は示している。
 報告書から導き出されることは、政府が工事を進める場所は新基地建設地には適さないということである。それ以外の結論はあり得ない。
 沖縄の基地負担軽減の面から言えば、新基地を辺野古に造ることは明らかにその目的に逆行する。地震や津波など災害の面からしても、辺野古海域に新基地を建設することは新たな危険を生み出すことにしかならない。この事実を政府は重く受け止め、対応すべきである。
 専門家からはこの間、新基地建設予定海域に活断層が存在する可能性が指摘されてきた。にもかかわらず、政府は17年11月、「辺野古沿岸域に活断層が存在するとは認識していない」との答弁書を閣議決定した。
 閣議決定の時点で、防衛局の報告書がまとまっていたか定かではない。だが、報告書と答弁書の大きな隔たりは看過できない。
 報告書は、沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏が情報公開請求で入手し、公になった。本来ならば、防衛局が調査実施機関として積極的に公表すべきものである。政府にとって不都合な調査結果を隠蔽(いんぺい)しようとしたのではないか。そう疑うほかない。