<社説>機密費一部開示 全ての情報を原則公開に


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 これまで全面非開示だった内閣官房報償費(機密費)の支出関連文書が初めて公開された。

 支出のうち約9割は官房長官が自らの判断で使用でき、領収書が不要な「政策推進費」だった。そもそも税金である。目的外支出が疑われた経緯もあり、透明性を高める必要がある。一定の期間を経た後、全ての情報を原則公開し事後検証できるようにすることを求める。公開できないのであれば廃止すべきだ。
 機密費は国の事業を円滑に遂行するために機動的に使うとされ、具体的な使途は公開されていない。内閣情報調査室の経費を含め年間約14億円の予算が計上されるが、支出方法や目的を定めた法令はなく、過去には野党工作や国会議員の外遊費などに支出されたとの証言もある。
 今年1月、市民団体のメンバーが機密費に関連する行政文書の開示を国に求めた3件の訴訟の上告審判決で、最高裁は、月ごとの支払額などが記された部分の開示を認める初判断を示した。
 開示されたのは自民党の現・元官房長官が対象で、安倍晋三首相、河村建夫衆院予算委員長、菅義偉官房長官の3人分だ。
 安倍首相と菅氏は1カ月当たり約7029万~約1億5832万円の機密費を支出し、うち約5200万~約1億4700万円を政策推進費として使用していた。しかし、いつ、誰に支出されたのか具体的な使途は明らかになっていない。疑惑は深まるばかりだ。
 河村氏の場合、2009年9月、自民党から民主党へ政権交代する直前の麻生内閣で2億5千万円の支出があったのは知られており、今回の開示文書にも明記されている。同9月8日に5回にわたり5千万円を入金し、同10日に引き出していた。
 共に開示された安倍首相、菅氏の支出した額と比べても1カ月の支出としては突出し、鳩山内閣には残金ゼロの状態で引き渡された。
 使途については「前の官房長官からの申し送りがあってのことなので」と明らかにしなかった。多額の機密費がきちんと管理されず、何に使われているのか分からない。あまりにも不誠実な対応であり、国民の知る権利に応えるべきだ。
 一方、今回の対象外だが、小渕内閣で官房長官を務めた故野中広務氏は10年に、野党対策のために使ったり、政治評論家に配ったりしていたと明らかにした。「1カ月当たり、多い時で7千万円、少なくとも5千万円くらい使った」と述べている。
 野中官房長官の下で官房副長官を務めていた鈴木宗男氏は、1998年11月の県知事選をめぐり、自民党推薦の稲嶺恵一氏の陣営に機密費3億円が渡っていたと証言したことがある。野中氏は否定したが、この点についても政府は公開すべきである。