平和願う心 音色に乗せ 被爆ピアノと被爆アオギリ二世 西原の塔演奏会で対面実現


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被爆アオギリ二世の前で、戦没者へ被爆ピアノの音色を届ける佐藤礼子さん=3日、西原町翁長慰霊の塔

 【西原】1945年8月6日の広島市への原爆投下で被爆した「被爆ピアノ」が3日、沖縄県西原町翁長にある西原の塔で「被爆アオギリ二世」と対面した。被爆ピアノを保管する矢川光則さん(66)は「奇跡の出会いだ」と話し、ピアノとアオギリ二世の出会いを「広島の人に伝えたい」と話した。

 被爆ピアノは、同日の第28回西原町平和事業「『平和の約束』~『被ばくピアノ』が奏でる平和の約束」のため、町に運ばれた。被爆アオギリ二世は原爆投下で被爆したが、翌年に芽吹いたアオギリの種から育てられたもの。西原の塔には2003年に植樹された。

 アオギリ二世が植樹されていることを知った矢川さんの希望で、被爆ピアノとの対面が実現した。西原の塔では、ピアノ講師の佐藤礼子さん(43)が被爆ピアノを演奏した。佐藤さんは「ピアノは、長い旅を経て慰霊の音色を届けに来た。『弾かせていただきます』という敬意と、戦没者への祈りを込めて、手を合わせ『芭蕉布』を弾いた。私ではなくピアノが歌って聞かせてくれた」と語った。

 町民主体の手作りコンサートとなった「『平和の約束』~『被ばくピアノ』が奏でる平和の約束」は午後3時に開演。原爆を乗り越えたピアノが奏でる音色は、平和を大切にする心を優しく力強く伝えた。

 1部では町子ども会育成連絡協議会のメンバーが平和メッセージを宣言。西原南小学校合唱隊は広島市立大州中学校3年生有志が作詞した「ねがい」を歌った。

バレエとコラボする被爆ピアノ=3日、西原町さわふじ未来ホール

 2部では民謡の知念こずえさんがわらべ歌メドレー「童神」などを歌った。読みあいネットワーク喜楽星7は、来場者と山之口貘の「喪のある景色」と堤江実の「ものさし」を交互に群読。またクラシックバレエの「Company Dream Art」は、「谷茶前」などバレエで沖縄を表現した。役場職員らで構成する「promise of peace」は「ONE LOVE 上を向いて歩こう」を会場と一体になって歌った。 (小波津昭子通信員)