規制緩和でも通訳士の育成継続 沖縄県、観光ガイド業務で 人材確保へ独自研修継続


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通訳案内士研修に応募を呼び掛ける関係者=7日、那覇市の琉球新報社

 訪日外国人客の急増で通訳ガイドの不足が課題となる中、5月に通訳案内士法が改正され、資格がなくても有料で外国人の観光案内ができるようになった。国家資格が必要だった観光案内業務の規制緩和によって、ガイドの数を確保することが狙いだが、観光人材の質の低下を懸念する声もある。一方、特例制度の創設などで通訳案内士の育成に力を入れてきた沖縄県は、「研修を受けることで自信を持って対応できる」(県観光政策課)として、引き続き資格の取得を呼び掛けている。

 通訳案内士は国家資格のほか、都道府県知事の認可で一定の地域で活動できる「地域限定通訳案内士」がある。さらに沖縄独自の取り組みとして、沖縄振興特別措置法に基づいて県が育成する「沖縄特例通訳案内士」の制度が2013年度から始まり、沖縄を訪れる外国人観光客の観光案内に対応してきた。

 今年3月末時点で、県内に在住する通訳案内士の人数は国家資格者が72人、地域限定が202人、特例型が最多の361人となっている。

 県は現在、17年度の特例通訳案内士育成研修事業の受講生を募集している。だが90人の定員に対し、7日までの応募者は20人にとどまる。応募数の異例の少なさは通訳案内士法が改正された影響が指摘される。

 一方で、法律改正により誰でも有料でガイドができるようになるものの、無資格者は「通訳案内士」を名乗ることはできない。国家資格者の登録制度は続き、地域限定の通訳ガイドの育成・研修も拡充するなど、有資格者の専門性を高める方向性が盛り込まれた。

 沖縄特例通訳案内士は100時間余の研修を経て、実技試験の合格者を県が登録する。対象言語は中国語、韓国語、英語。語学だけでなく沖縄の歴史や文化の知識、各国のマナーを踏まえた接客など学ぶ。研修を通じて救急救命や旅程管理のノウハウも習得する。

 育成研修の事務局となるチャイナゲートウェイ(豊見城市)の周文代表取締役は「語学と知識を生かして、沖縄観光に貢献してほしい」と話している。