基地負担への対応余儀なく アジアの経済活力取り込む 民意重視の県政運営 翁長県政3年


この記事を書いた人 大森 茂夫
辺野古岩礁破砕差し止め訴訟の意義を記者団に説明する翁長雄志知事=10月、那覇市泉崎の県庁

 翁長雄志知事の就任から10日で3年が経過した。公約に掲げた米軍普天間飛行場返還・移設問題では「あらゆる手法を講じて」として、国の提訴なども重ねてきたが、工事は進んでいる。米軍機の墜落や炎上事故、米軍関係者による犯罪や事故も絶えず、沖縄の過重な基地負担への対応も余儀なくされてきた。経済発展を続けるアジアの活力を取り込む施策も展開している。

 <解説>

 就任3年を迎えた翁長県政最大の懸案で知事公約にも掲げる辺野古新基地建設反対には、初の国提訴などで対抗しているが、有効な手だてが打てているとは言い難い。4月に着手した護岸工事の進展もあり、埋め立て承認の撤回を早急に求める声が高まるが、翁長雄志知事は決断時期を明示していない。決断のタイミングによっては知事支持の民意にも影響を与える可能性がある。

砕石が次々と投下され、工事が進むN5護岸=11月、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ

 3年の間、基地問題で何度も県民から反発が高まる場面もあった。昨年は米軍北部訓練場の部分返還を「苦渋の選択の最たるもの」と述べたり、ヘリ発着場新設へ明確に反対しなかったり、基地問題への姿勢のぶれを指摘する声もある。

 翁長知事は那覇軍港移設などを含む日米特別行動委員会(SACO)合意を進める姿勢だが、合意内容はほとんどが県内移設の条件付きで基地負担の軽減にはつながらないとの指摘もあり、知事が再考を求めるべきだという声も依然として強い。

 今年に入って前副知事の安慶田光男氏の教員採用試験を巡る口利き疑惑でも県政運営への信頼性が問われた。

 最近では辺野古新基地での石材搬送に関して港使用の許可を出したことで、新基地に反対する市民から強く抗議が出ている。与党県議も県議会で抗議の声を上げた。

 一方、知事を支える県政与党の姿勢が見えにくい状態にあるのも否定できない。オール沖縄体制として、県政運営に対してそれぞれが「腹六分」で支援してきただけに、知事サイドへの遠慮を指摘する向きもある。

 翁長知事は民意を意識した県政運営を進めてきた。今の翁長知事が民意をどうくみ取り、県政運営にどう生かそうとするか、県民は注視している。(滝本匠)