米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票について、条例制定請求を目指して署名活動を始めた「『辺野古』県民投票の会」に協力することで県議会与党の社民、社大、共産の3党が一致した。与党内では、議会主導で署名活動を始めるべきだとする推進派と、埋め立て承認「撤回」への影響などを懸念する慎重派の議論が平行線をたどり、結論を棚上げする状況が続いた。議論開始から約半年、業を煮やした市民有志の動きに引っ張られる形で、政党も県民投票推進にかじを切ることになった。
社民党県連の幹部は「署名集めが始まってしまった以上、県民投票をすべきかどうかの議論を続ける状況ではなくなった」と、署名活動の開始で政党内の議論が変化してきたことを明かす。「政府が喜ぶ最悪のパターンは県民投票で埋め立て賛成が上回ること、投票率が低すぎて成り立たないこと」と語り、「そして署名活動が盛り上がらないことも、辺野古に反対の人は少ないというメッセージを送ってしまう。だから失敗できない。いま県民投票に乗らないのはそういうことになる」と強調する。
与党会派間の議論時には県民投票に慎重な姿勢もあった共産党県委は、5月31日の会見で署名活動への「全面的な協力」を表明。渡久地修副委員長は「今までは県民投票後に撤回という議論だったが、署名活動を始めた市民たちが求める県民投票は撤回の時期を縛るものではないと明言している。県民の意見の違いを克服できる状況に変わった」と主張した。
辺野古の現場で運動に参加する市民を中心に、県民投票の手法に批判的な意見が根強いことも念頭に「県民投票が知事の撤回を支えるという認識で大同団結していける」と語った。
これに対して県政野党の自民党県連は「賛否についてはまだ議論していない」(島袋大幹事長)と現時点で県民投票への評価は示していないが、県連内では翁長陣営の知事選に向けた「政治利用だ」との批判の声が大きい。
こうした中で、1996年の県民投票で署名活動を担った連合沖縄がいまだ議論を始めていない状況もある。社民や社大、共産の政党が旗色を鮮明にしたことで、実働部隊となる労働組合が組織力を発揮していくかが焦点となる。
与党幹部は「県民の意思表示をする機会として、県民投票を捉え直して取り組まないといけない。スケジュールの厳しさはあるが、爆発的な盛り上がりで必要な署名を集めれば日程の前倒しにもなる」と語った。 (吉田健一、明真南斗)