米演習場に構造的危険 名護市数久田被弾事件 射程内に民間地域


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 名護市数久田で銃弾のような物が見つかり、ガラス2枚が破損した。米軍の銃弾と断定されていないが、可能性は大きい。現場近くにはキャンプ・シュワブの演習場がある。シュワブ内で米軍が閉鎖した射撃場レンジ10は構造的問題を抱えるが「置き去り」にされてきた。米軍は22日、レンジ10の閉鎖を発表、今回の件はその問題と関係があるとみられる。23日の「慰霊の日」を前に、戦後73年がたっても米軍基地の危険性と隣り合わせの住民生活が続いている。

農園の作業小屋で見つかった1つ目の弾痕とみられる傷。ガラスが割れている。

置き去り

 1978年から87年までの間にシュワブ周辺の名護市や宜野座村、恩納村で流弾事件が7件発生している。斜角制御装置の設置など対策が取られたが、2002年にも名護市数久田で流弾が起きた。現場はレンジ10から約4・5キロの地点だった。

 地元の県や名護市、市議会はレンジ10での実弾演習廃止を求めた。しかし、現在までこの問題は放置されてきた。

 米軍は18日から24日までの終日、米軍キャンプ・シュワブでの実弾演習を県や市町村に通知した。演習通知は「○月○日~○月○日0時~24時」という表記だ。県によると、ほぼ1週間演習するという通知が週1度の頻度で来る。「ほぼ毎日演習する」と宣言されているような状態だ。いつ演習し、いつ演習していないのか判別できない上、訓練内容も明確に示されない。

 県幹部の一人は漠然とした演習通知を「こんなの『演習通知』と言えない」と批判する。「沖縄側も鈍感になっていた。問題が起きてから思い出す。反省しなければならない」と唇を噛んだ。

「慰霊の日」前に

 県や県議会、嘉手納町議会は22日、米軍のF15墜落を受けて関係機関に相次いで抗議した。県議会米軍基地関係特別委員会は中嶋浩一郎沖縄防衛局長を呼び出した。議員団は被弾事件に触れ「いつまでも沖縄を植民地扱いしている」「同じことの繰り返しだ」と厳しく追及した。

 県議会軍特委の仲宗根悟委員長は23日の「慰霊の日」には演習や米軍機の飛行を控えるよう求めた。

 中嶋局長は「慰霊の日は県民にとって大事な日なので毎年、全米軍に対し訓練を控えるように要請している」と強調した。しかし過去には慰霊の日に米軍機の訓練が何度も目撃されている。

 在沖米海兵隊がレンジ10の閉鎖を発表したことについて県幹部は「閉鎖したということは米軍が関係している蓋然性が高いとみているのだろう」と指摘した。一方、防衛省幹部は「非常に困っている。(原因の特定に)ちょっと時間がかかりそう。過去にも流弾があった地域で心配している」と語り、その他の基地問題に波及することを懸念した。
 (明真南斗)