識者「県民感情逆なで」 沖縄戦での反感強く


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「慰霊の日」に自衛隊員に訓示し、写真撮影する小野寺五典防衛相(中央)=23日、那覇市の海上自衛隊那覇基地

 「慰霊の日」の23日、県内の自衛隊基地を視察した小野寺五典防衛相は自衛隊員を前に訓示し、北朝鮮や中国の動きに触れて自衛隊の必要性を強調した。記者会見では米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設への理解を求める発言もあった。日本軍が住民を巻き込んで多くの犠牲者を出した沖縄戦。「軍隊は住民を守らない」という教訓が指摘されている。不戦を誓う「慰霊の日」に自衛隊を行脚し、記念撮影では笑顔も見せた防衛相に、県内からは「県民の感情を逆なでする」との批判の声も上がっている。

 小野寺氏は糸満市の平和祈念公園を足早に去ると、黒いかりゆしウエアから背広姿になった。海上自衛隊那覇基地のP3C哨戒機用格納庫では、制服姿の海上自衛隊員が整列し敬礼で迎えた。小野寺氏は北朝鮮の船舶による「瀬取り」や中国潜水艦の尖閣諸島周辺の接続水域航行に触れ「諸君らなくして我が国を守ることはできない」と自衛隊の存在意義を強調した。

 小野寺氏は那覇基地で開いた会見で「慰霊の日」に部隊を視察したことについて記者に問われ「大戦でつらい思いをした県民に寄り添う形で部隊の任務を運用してほしい。そのような思いで部隊を視察し、訓示した」と説明した。

 翁長雄志知事が平和宣言で辺野古移設が米朝会談後の緊張緩和の流れに「逆行する」と発言したことに反論も。「在日米軍基地はこの地域の安全保障上重要な役割を果たしている」とし、辺野古移設に理解を求めた。「北朝鮮は核弾道ミサイルについて何ら具体的な動きは示していない」と警戒の必要性を強調した。

 沖縄戦では日本軍が住民を虐殺したり壕から追い出したりした。軍隊に対する県民の反感は根強い。沖縄が日本に復帰し、自衛隊が配備されることになった際、県民から強い反発があった経緯もある。

 石原昌家沖縄国際大名誉教授は「県民は沖縄戦で日本軍によって犠牲を受けたと認識し『自衛隊=日本軍』と反発してきた。追悼式への参加日程を利用して部隊を激励したかのように見え、県民の感情を逆なでする」と批判した。

 県平和委員会の大久保康裕代表理事は「朝鮮半島が緊張緩和に向かう流れがあるからこそ『北朝鮮や中国の脅威はまだあるんだ』とアピールする意図があったのではないか。脅威がなくなれば、自衛隊の必要性もなくなる」と分析した。